カテゴリー: 技術・研究

  • ChatGPTとは違う「物理を理解するAI」登場 5兆データを一度に処理

    ChatGPTとは違う「物理を理解するAI」登場 5兆データを一度に処理

    AIスタートアップのAccelerated Understandingは8月25日、言語ではなく物理現象の予測やシミュレーションを目的とした新しいAIモデルを発表した。

    共同創業者は、カリフォルニア工科大学(Caltech)教授で元NVIDIAのAI研究責任者でもあるAnima Anandkumar氏と、AIインフラの専門家Benedikt Jenik氏。

    ChatGPTやGeminiなどの生成AIが主に文章や画像を扱うのに対し、同社のAIは物体の動き、熱、流体、気象など、現実世界で起こる物理現象を理解・予測することを目指している。(Reuters⁠)

    「次の言葉」ではなく「次に何が起きるか」を予測

    現在広く使われている大規模言語モデルは、大量の文章などを学習し、文脈から次に続く言葉を予測することで回答を生成する。

    一方、Accelerated Understandingが開発するAIは、空間と時間の中で物理現象がどのように変化するのかを予測する。

    例えば、

    • 熱がどのように広がるか
    • 空気や液体がどのように流れるか
    • 物体がどのように変形するか
    • 天候がどのように変化するか

    といった現象をAIによってシミュレーションすることを想定している。

    同社はこれを、3次元の空間に時間を加えた「4D」の物理データを扱うAIと説明している。(Accelerated Understanding⁠)

    ChatGPTとは異なる「Neural Operator」を採用

    技術的にも、一般的な生成AIとは大きく異なる。

    ChatGPTなど多くの生成AIでは「Transformer」と呼ばれる仕組みが使われている。

    これに対し、Accelerated Understandingのモデルは「Neural Operator(ニューラル・オペレーター)」という技術を採用している。

    Neural Operatorは、個々のデータだけを予測するのではなく、物理システム全体がどのように変化するのかという関係性を学習することを目的としたAI技術だ。

    Anandkumar氏はこの分野の研究を長年進めており、過去にはAIを使った高解像度気象予測モデル「FourCastNet」の開発にも関わっている。(Accelerated Understanding⁠)

    1回で「5兆」のデータポイントを処理

    今回特に注目されているのが、AIが一度に扱えるデータ量だ。

    Accelerated Understandingによると、同社のモデルは推論時に5兆を超える4次元データポイントを一度に処理できたという。

    学習時には最大1兆規模のコンテキストを扱い、モデル自体についても大規模なスケーリング実験を実施している。(Accelerated Understanding⁠)

    Reutersは、同社がテストで扱った5兆のデータポイントについて、AnthropicやGoogleの主力言語モデルが通常扱うコンテキストと比較すると約500万倍に相当すると報じている。(Reuters⁠)

    ただし、この数字は単純なAI性能比較ではない。

    言語AIが扱う「トークン」と、4次元の物理モデルが扱う「データポイント」は性質が異なるため、「5兆だからChatGPTより500万倍賢い」という意味ではない点には注意が必要だ。

    半導体、ロボット、天気予測などへの活用を想定

    同社が想定しているのは、一般消費者向けのチャットサービスではなく、科学やエンジニアリング分野での活用だ。

    具体的には、

    • 半導体やチップ設計
    • ロボット開発
    • 天気・気候予測
    • エネルギー
    • 地質解析
    • 医療機器
    • 物理シミュレーション

    などへの利用を想定している。(Reuters⁠)

    現在、こうした分野では用途ごとに専用のシミュレーションソフトやモデルを構築する場合が多い。

    Accelerated Understandingは、より幅広い物理現象を一つのAIモデルで扱えるようにすることを目指している。

    AI LinkHub解説

    今回のニュースは、「AI=ChatGPTのような会話AI」ではないことがよく分かる例です。

    生成AIでは文章、画像、音声などを作る能力が注目されてきました。

    一方、今回のようなAIが目指しているのは、

    「現実世界で次に何が起こるのかを予測すること」

    です。

    例えば、新しい半導体を設計するときに「この形なら熱はどう広がるのか」、ロボットを作るときに「この動きをすると物体はどう動くのか」といったことを、実際に作る前にAIで大量に試せるようになる可能性があります。

    これが実用化されれば、AIの役割は文章作成や情報検索だけでなく、研究・設計・発明そのものを支援する方向へ大きく広がります。

    ただし、現時点では注意も必要です。

    「5兆データポイント」という大きな数字は同社による発表であり、実際の企業利用で従来の物理シミュレーションよりどれだけ正確で、速く、安くなるのかについては、まだ十分な外部検証がありません。(Magica⁠)

    そのため、現段階では「物理シミュレーションを完全に置き換えるAIが完成した」というより、従来の生成AIとは違う方向から、科学・工学向けAIの可能性を広げる新しいアプローチが登場したと見るのが適切です。

    AIが言葉を理解するだけでなく、現実世界の法則まで扱えるようになるのか。

    今後の進展がかなり注目される分野です。

    情報元

    • Accelerated Understanding:公式発表・技術説明
    • Reuters:Accelerated Understanding創業者と新AIモデルに関する報道
  • OpenAI・Anthropicでも「C+」主要AI企業5社のAI制御・安全対策を評価

    OpenAI・Anthropicでも「C+」主要AI企業5社のAI制御・安全対策を評価

    AIの性能が急速に高まる一方、開発企業が高度なAIを安全に監視・制御する体制には、依然として課題が残っている。

    非営利団体「Guidelight AI Standards」は、OpenAI、Anthropic、Google、xAI、Metaの主要AI企業5社について、高度なAIを安全に管理するための取り組みを評価した。

    2026年8月19日のReuters報道によると、最も高い評価だったOpenAIとAnthropicでも「C+」。Googleは「D+」、xAIは「D-」、Metaは「F」となった。

    今回の評価で重視されたのは、AIモデルそのものの性能ではなく、開発企業側の監視・制御体制だ。

    Guidelightが公開する「Control v1.0」では、AIが内部で何をしているか把握できるか、問題の兆候を検知できるか、監視システム自体を十分に検証しているか、AIによる有害な行動を阻止できるか、第三者による検証を受けているか、制御が破られた場合に備えているかという6つの原則を掲げている。

    背景には、AIが文章生成や質問への回答だけでなく、プログラミングなど複雑な作業を自律的に進める「AIエージェント」へと発展していることがある。

    Reutersは、OpenAIとAnthropicが、自社のAIエージェントがテスト環境を抜けて他社のシステムへ到達した事例を公表しているとも報じている。AIの能力が高まるにつれ、「何ができるか」だけでなく、「人間側がどこまで確実に監視・制御できるか」が重要な課題となっている。

    Guidelight AI Standardsは、OpenAIで安全分野に携わったPage Hedley氏とSteven Adler氏が設立した独立系非営利団体。AI企業から資金提供を受けず、公開情報や企業からの情報提供などをもとに、安全基準の策定と企業評価を行っている。

    AI開発競争では、「どれだけ賢くなったか」「何ができるようになったか」といった性能面に注目が集まりやすい。

    今後はそれに加え、高性能になったAIを人間側が監視し、必要な場合には確実に制御できるのかという安全対策も、重要なテーマになっていきそうだ。

    AI LinkHub解説

    今回の「C+」や「F」は、ChatGPTやClaudeを利用すること自体の危険度を表した点数ではありません。

    評価されているのは、AIを開発する企業側が、高度なAIに対してどの程度の監視・制御体制を整えているかという点です。

    簡単に整理すると、

    AIが何をしているか確認する

    ↓

    問題の兆候を見つける

    ↓

    危険な行動を制限する

    ↓

    外部からも安全性を検証する

    ↓

    万が一、制御できなくなった場合に備える

    といった仕組みが、どこまで整っているかを見ています。Guidelightでは、これらを「Control」という安全基準の中で6つの原則に整理しています。

    これまでAIは、人間が質問を入力すると回答を返す「チャットツール」として利用される場面が中心でした。

    しかし現在は、AIエージェントのように、大きな目的を与えると複数の作業を自ら進める仕組みも増えています。

    できることが増えれば、AIはさらに便利になります。一方で、「AIの能力が高くなる速度」と「安全に管理する技術が進歩する速度」が、必ずしも同じとは限りません。

    今回の評価は、モデルの性能だけではなく、「高度になったAIを人間側がきちんと管理できるのか」という部分にも目を向ける材料の一つです。

    ただし、今回の評価はGuidelight AI Standardsという一つの非営利団体が定めた基準によるものです。

    そのため、「MetaのAIは危険」「OpenAIなら安全」と単純に判断できるランキングではありません。

    各社や各AIモデルの安全性を絶対的に決める成績表ではなく、「現在どのような安全対策が整備され、どこに課題が残っているのか」を比較する一つの指標として見るのが適切でしょう。

    また、Guidelight自身も、現在の基準や評価プロセスは今後も更新していくものと位置づけています。

    情報元

    Reuters|2026年8月19日

    「AI firms can’t yet contain what they’ve built, study finds」

    主要AI企業5社の評価結果、各社の安全対策、AIエージェントの事例など。

    Guidelight AI Standards|Control v1.0

    AIの監視、異常検知、有害な行動の制限、第三者検証、制御喪失への備えなどに関する評価基準。

    Guidelight AI Standards|About / Team

    団体の目的、独立性、Page Hedley氏・Steven Adler氏の経歴など。

  • NTTドコモとSamsung、AIで通信速度低下を予測・回避へ6G時代に向け実証成功

    NTTドコモとSamsung、AIで通信速度低下を予測・回避へ6G時代に向け実証成功

    NTTドコモとSamsung Electronicsは2026年8月10日、AIを活用してスマートフォンの通信速度低下を事前に予測し、通信品質の悪化を未然に防ぐ技術の実証に成功したと発表しました。両社は6G時代を見据え、AIによって個々のユーザーの状況に応じて通信を最適化する技術の研究を進めています。

    新技術では、過去の通信品質データに加え、ユーザーの移動傾向や利用サービスなどをAIが分析。通信速度が低下する兆候を検知すると、実際に速度が落ちる前に、より良好なネットワークへ自動的に切り替えます。従来の「通信品質が低下してから切り替える」仕組みから、AIが先回りして通信環境を整える仕組みへ変わるのが特徴です。

    2026年1月に日本国内で行われた実証では、ローカル5Gと商用LTEの環境で市販スマートフォンを搭載した車両を走行させて検証。その結果、通信速度低下の発生頻度を13.1%から7.2%へ低減できたと報告されています。

    両社は今回の技術を、将来的にAIが通信ネットワークをより自律的に最適化する「AI-Centric Network」につながる技術として研究しており、国際標準化団体3GPPへの共同提案も進めています。

    AI LinkHub解説

    AIと聞くと、ChatGPTのように文章を作ったり質問に答えたりする「生成AI」を思い浮かべる人も多いかもしれません。

    しかし、AIの活用先はチャットや画像生成だけではありません。

    今回の技術を簡単に言えば、

    「通信が遅くなってから直す」のではなく、「遅くなりそう」とAIが予測して先に対処する

    というものです。

    例えば移動中の動画視聴やオンライン会議では、場所やネットワーク環境の変化によって突然通信が不安定になることがあります。こうした変化をAIが事前に予測できれば、ユーザーが通信速度の低下を感じる前に別のネットワークへ切り替えられる可能性があります。

    今後AIは、私たちが直接操作するサービスだけでなく、通信・自動車・医療・製造など、普段は意識しない社会インフラの裏側にも組み込まれていくと考えられます。

    今回の実証は、「AIを使う」というよりも**「気付かないところでAIに支えられる」未来**をイメージしやすい事例と言えそうです。

    情報元

    一次情報:NTTドコモ
    2026年8月10日「ドコモとSamsung、AIで通信速度低下を予測し未然に防ぐ技術の実証に成功」

    詳細確認:ケータイ Watch
    参考:Samsungは2024年からNTTドコモとの次世代モバイル通信におけるAI共同研究を公表しています。

  • GPT-5.6 Solが最大14倍高速に。OpenAIが「Ultrafast」を公開

    GPT-5.6 Solが最大14倍高速に。OpenAIが「Ultrafast」を公開

    2026年8月13日(現地時間)OpenAIは、GPT-5.6 Solを大幅に高速化する新しい処理モード「Ultrafast」をプレビューした。

    Ultrafastでは、GPT-5.6 Solの出力速度をStandard処理と比べて最大14倍まで高速化。出力速度は最大750トークン/秒に達する。

    高速化にはAI半導体を手がけるCerebrasのハードウェアを活用している。モデルそのものの性能だけでなく、AIから回答が返ってくるまでの「速さ」を大きく引き上げる取り組みとなっている。

    まずはAPIを利用する一部の顧客向けに提供し、利用できるキャパシティの拡大に合わせて対象を広げていく計画としている。

    生成AIの性能競争では、これまで回答の精度や推論能力が大きく注目されてきた。今後はそれに加えて、リアルタイム性が求められるAIサービスなどで、「どれだけ速く応答できるか」も重要な競争軸になっていきそうだ。

    AI LinkHub解説

    AIの進化は「どれだけ賢いか」だけでなく、「どれだけ速く反応できるか」にも広がっています。
    人間との会話と変わらないほど瞬時にAIが反応する未来も、少しずつ近づいているのかもしれません。

    情報元

    OpenAI公式|Previewing Ultrafast mode: GPT-5.6 Sol at up to 14X the speed(2026年8月13日)
    https://openai.com/index/previewing-ultrafast/

    Yahoo!ニュース
    https://news.yahoo.co.jp/articles/575f825920f1c2cbbd6946c4fb2dab3b759b40c1