AIが“聞こえ”を変える リアルタイムAI搭載の新型補聴器「Phonak EON」登場


スイスの聴覚機器大手Sonovaは8月24日、補聴器ブランドPhonakの新世代プラットフォーム「EON」を発表した。

新製品の「Phonak Audéo EON Sphere」では、専用AIチップと深層学習技術を使い、周囲の騒音と人の声をリアルタイムで分析する。

騒がしい場所でも会話を聞き取りやすくすることを狙った、第3世代のリアルタイムAI補聴器となる。 (Sonova⁠)

AIが周囲の音をリアルタイムで分析

EON Sphereには、新たに開発された「HYPERSONIC」チップが搭載されている。

このチップを使う「Spheric Speech Clarity 3.0」は、深層ニューラルネットワークによって、人の声と背景ノイズをリアルタイムで分離する仕組みだ。

Sonovaによると、同機能を使用した場合、同じ設定で機能を使用しない場合と比較して、さまざまな方向から聞こえる会話の理解を改善できるとしている。

また、「AutoSense OS AI 8.0」が周囲の音環境を継続的に分析し、状況に応じて補聴器の設定を自動調整する。 (Sonova⁠)

騒音だけでなく風の音にも対応

日常生活で会話を聞き取りにくくするのは、室内の騒音だけではない。

屋外では風の音も大きな障害になる。

EONには「WindBlock 2.0」が搭載され、Sonovaの発表では風切り音を最大50デシベル低減し、信号対雑音比を最大30デシベル改善できるとしている。

レストランや駅だけでなく、屋外での会話にもAIを活用する設計だ。 (Sonova⁠)

AIを強化しながら小型・軽量化

AI処理が高度になるほど、一般的には消費電力や発熱が大きくなりやすい。

しかし今回のHYPERSONICチップでは、従来世代と比べてAI処理時の電力効率を37%改善したという。

その結果、EON Sphereは前世代より25%小型化、20%軽量化しながら、最大38時間のバッテリー駆動を実現している。 (Sonova⁠)

AI機能を増やすだけでなく、補聴器としての装着性や実用性も同時に改善した点が特徴となる。

「AI=チャット」ではない

現在、AIと聞くとChatGPTやGeminiなどの生成AIを思い浮かべる人も多い。

しかしEONで使われているAIは、文章を生成するためのものではない。

人の声、周囲の騒音、風などをリアルタイムで認識し、「今どの音を聞き取りやすくするべきか」を判断するために使われている。

AIが画面の中だけではなく、日常生活の機器そのものに組み込まれる事例の一つだ。

米国から順次展開

Phonak EONは8月24日から米国の聴覚専門家向けに提供が始まった。

ドイツ、フランス、英国、オーストラリアなどでも9月から展開し、その後さらに地域を広げる予定となっている。 (Sonova⁠)

AI LinkHub解説

今回のニュースで面白いのは、AIが「人間の代わりに何かを作る」ためではなく、人間が現実世界をより快適に感じるために使われていることです。

補聴器では、単純にすべての音を大きくすればよいわけではありません。

聞きたい人の声を強調しながら、周囲の雑音や風などを抑える必要があります。

そこでAIが、

「どの音が会話で、どの音が雑音なのか」

をリアルタイムで判断しています。

これは、AIが日常生活へ入っていく一つの分かりやすい例です。

今後は補聴器だけでなく、イヤホン、メガネ、車、家電などでも、利用者が意識しないところでAIが周囲の環境を理解し、自動的に調整する製品が増えていく可能性があります。

一方で、「聞き取りが2倍になる」といった数値はSonova自身の試験結果に基づくものです。

実際の効果は利用者の聴力や周囲の環境によって異なるため、製品性能をすべての人にそのまま当てはめることはできません。

それでも、AIがチャットや画像生成だけでなく、身体や生活を直接支える技術へ広がっていることは、今回の発表から見えてきます。

情報元

  • Sonova:Phonak EON公式発表
  • Sonova:EON技術・製品情報
  • Reuters:Sonovaの新AI補聴器に関する報道

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