AIへの巨額投資が続くなか、その資金を本当に回収できるのか――。
エコノミストのエミン・ユルマズ氏が、日本経済新聞のインタビューで、世界的なAIブームが崩れた場合、2000年前後のITバブル崩壊よりも深刻な「リーマン・ショック型」になる可能性を意識していると指摘した。
背景にあるのは、AI関連企業の業績だけではない。
AIを支えるデータセンターに巨額の資金
ChatGPTなどの生成AIを動かすには、高性能な半導体だけでなく、大規模なデータセンターや電力設備が必要となる。
Microsoft、Amazon、Google、Meta、Oracleなどの「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大クラウド企業は、AI需要の拡大を見込み、データセンターへ巨額の投資を続けている。
その一方で注目されているのが、将来使用するデータセンターのリース契約や購入契約など、今後発生する大規模な支払いだ。
こうした契約の一部は、設備の稼働前には貸借対照表上の負債として計上されず、財務諸表の注記などで開示されている。
つまり「隠された借金」というより、通常の負債を見るだけでは把握しにくい、将来の巨額な支払い約束が積み上がっている状態だ。
なぜ金融市場まで関係するのか
問題になるのは、AIへの投資に見合うだけの利益を将来回収できなかった場合だ。
データセンター建設には、企業の手元資金だけでなく、社債、銀行融資、プライベートクレジットなど、さまざまな金融資金が使われている。
ユルマズ氏が特に懸念している企業の一つがOracleだ。
同社では信用リスクを示すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が大きく上昇している。
CDSとは、企業が社債などを返済できなくなるリスクに備える「保険」のような金融商品だ。
CDSの価格が高くなるほど、市場がその企業の信用リスクを以前より強く意識していることを示す。
そのため、もしAI需要が想定ほど伸びず、巨額投資の回収が難しくなれば、AI企業だけでなく、資金を提供した金融機関や投資家にも損失が広がる可能性がある。
これが、ユルマズ氏がITバブル型ではなく「リーマン・ショック型」のリスクまで意識している理由だ。
中国AIの台頭も収益化のハードルに
もう一つのポイントが、中国AI企業との価格競争だ。
2025年にはDeepSeekが低コストなAIモデルを発表し、「高性能AIには莫大な開発費が必要」という前提に衝撃を与えた。
その後も中国企業から、高性能と低コストを両立させようとするAIモデルが相次いで登場している。
米国企業が巨額のデータセンター投資を続けても、AIサービスそのものの価格競争が激しくなれば、投資額に見合った利益を得るハードルはさらに上がる。
「AIが成長するかどうか」だけではなく、
AIは成長しても、その成長から十分な利益を得られるのか。
今後のAI産業を見るうえで、重要な論点になりそうだ。
AI LinkHub解説
今回の記事で重要なのは、「AIバブルが崩壊する」と決まったわけではないことです。
「リーマン・ショック型になる可能性」は、エミン・ユルマズ氏が示しているリスクシナリオの一つです。
実際、AI需要は現在も拡大しており、巨大テック企業の財務基盤も、2008年当時の金融機関と同じではありません。
一方で、AIを支えるための設備投資と借り入れが急速に膨らんでいるのも事実です。
これまでは「新しいAIモデルがどれだけ高性能になったか」が注目されがちでしたが、これからは、
誰が巨額のAIインフラ投資を負担し、その費用をどう回収するのか
という「AIのお金の流れ」も、AI業界を見る重要なポイントになってきています。
次に注目したいのは、AIインフラそのものの価格上昇と、逆に低コスト化を進める中国AIの動きです。
情報元
日本経済新聞:エコノミスト、エミン・ユルマズ氏へのインタビューhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB178SR0X10C26A8000000/?msockid=27ee9481d99962932595820fd85f63e9
Reuters:米テック企業のAI投資・社債発行・データセンターの将来リース契約などに関する報道https://jp.reuters.com/markets/japan/2YPYXL5C4NKVPFG5433I6BXMKI-2026-08-24/


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